多摩ニュータウンに建つ保育園の建て替え計画である。

こころ保育園は多摩ニュータウンの際にあり、新設から約40年、その広い園舎、園庭ではニュー タウンに住む多くの子供たちが過ごしてきた。
2000年代に入り保育園の不足が社会問題化し、助成金や設置基準の緩和等により多くの新設園が建てられたが、2000年代後半から、駅から遠い園では定員割れが起こり始めている。 こころ保育園では、そのような問題に対して、地域の乳幼児のいる家庭へのケア、多様な背景をもつ園児や放課後の学童の受け入れなど、通常の認可保育園の枠組みを超え、多種多様な子供たちの受け入れを行なっている。
そのため、認可保育園の施設基準でうたわれているような通常の保育室意外にも、多様な場所が求められた。
そのような保育園の要望に対して、私たちは保育室以外も居場所を作るような試みを行なった。
例えば廊下は、園庭側に縁側のように配置するとともに、一部に平面的に膨らみをつけたり小部屋のようなものを設けるなど、ただの移動空間ではなく子供にとっての第三の居場所になるような仕掛けをしている。 これらの場所は、集団で保育室にいる時に、その場にいられなくなってしまった子供の気分転換の場所になると考える。
一方で学童受け入れに対しては、まとまった大きな空間が求められたが、昨今の建築費高騰の影響を見据えて、既存園舎の エントランス付近を一部を残し活用することにより対応をした。
既存棟は保育室のある新設棟とゾー ニングされているため、保育機能とその他機能が干渉することなく運営が可能となる
また設計の中で近隣住人や古くから在籍している保育土にヒアリングする機会があったが、親子でこころ保育園に通い、今でも近くに住んでいるという方が多く、陰ながら保育園の建て替えに思いをめぐらせている方が多いことが分かった。

既存園舎の特に象徴的な顔となる玄関廻りを残すということは、街の記憶を継承することにもなると考える。

用途:保育所
所在地:東京都多摩市
竣工:2025年予定
主要構造:RC造・木造混構造