Will corp. head office building

本計画は、産業用プリンターの設計・製作・販売を行う企業の社屋における、増築および改修のプロジェクトである。
若い世代の社員が増え、来客の機会も多くなったことから、事業拡大を機に社屋刷新の相談を受けた。既存の建物は倉庫を転用したもので、機能的にも設備的にも限界が見えていた。当初は建て替え案も検討したが、建物自体の状態が良好であり、また工事中の業務継続を重視して、増築と改修の組み合わせを選択した。

敷地は埼玉県三芳町、武蔵野台地に広がる平坦な土地に位置する。東京都に近接しながらも農地や緑地を残す地域であり、当該敷地も三富開拓の田園風景と背後の倉庫群・新興住宅地との境界にある。これまでの社屋は、郊外風景に溶け込みすぎて存在感を欠き、看板のみが目立っていた。

そこで、遠景からも田園越しに視認できる「軽快な看板のようなファサード」を目指し、前面道路沿いにピロティ形式の増築棟を配置した。鉄骨柱をセットバックさせ、方杖で支持する構造により、細長い2階ボリュームを軽やかに浮かせている。外壁にはリブ付き金属材やメタル塗装を組み合わせ、周辺の倉庫建築と調和させつつ独自の表情を持たせた。

また、既存建物から距離を取り、一回り小さい増築棟を重ねることで、ファサードに奥行きを与え、親しみやすい表情を生み出している。敷地の奥まで自然光を導き入れる計画とすることで、深い敷地形状でも明るさと開放感を確保した。

内部計画では、1階を作業場・物流倉庫・テスト検査室とし、2階に事務・打合せスペースを集約。さらに増築棟の2階は、新事業の製作や開発に対応できる多目的スペースとした。来客動線には、リズムよく配置された出目地や、透過性を調整したシナ合板の間仕切りを用い、奥の新事業室へ自然と誘うような内外連続性のあるデザインを実現している。

用途:事務所 作業場
所在地:埼玉県 
竣工:2023年 
主要構造:鉄骨造

撮影:楠瀬友将